昔2chの軍事板で紹介されててずっと読みたいと思っていた本。割と有名な本らしい。
Amazon.co.jp: 戦争における「人殺し」の心理学 (ちくま学芸文庫): デーヴ グロスマン, Dave Grossman, 安原 和見: 本
本来人は同胞たる人を殺すことに抵抗を覚えるような存在である。この本能は戦時の際にも働くものであり、第二時世界大戦までは、米軍歩兵の発砲率は非常に低かった。歩兵同士の戦闘では躊躇わずに人を殺す側に多いに分が有るわけで、発砲率の向上というのは軍隊の訓練における至上命題だ。そのために心理学的な知見を取り入れた新しい訓練法が導入され、その結果、ベトナム戦争ではこの発砲率が九割を超えるまでに上昇した。 この本では、戦争において殺人を可能にする因子を解明し、ベトナム戦争での発砲率の向上の謎を解き明かす。そしてこれと同時に扱われるべき問題、精神的戦闘犠牲者、及びPTSDの問題を取り扱い、ベトナム戦争がアメリカにもたらした代償を解明する。
平和な社会に生きる人々が戦争についてあれこれ言うとき、対人的に人を殺し、殺される、戦闘の本質に目を背けている場合が多い。戦争における人殺しは、悲惨とかいう言葉で片付けるような問題では無いのである。
前書きから一箇所引用してみよう。
レオ・フランコウスキはこう述べている。「文明は例外なく盲点を生む。それについては文明は考えることさえしない。その真実を知らないからではない、知っているからだ」。本書で発言を引用した帰還兵たちは、その文明の盲点に顔をこすりつけられてきた。ある帰還兵が語っているように、私たちはたしかに<セックスについて学んでいる童貞>である。だが兵士たちなら、みずからが高い代償を支払って学んできたことを、ほかの者に教えてやることができる。私の目的は、戦闘における殺人の心理学的な側面を理解し、国の呼びかけに応え、人を殺した―あるいは代償を支払っても殺さないことを選んだ―男たちの、心理的な傷と傷痕を探ることである。