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月配列U9RC2版をベースとした配列でタイプウェル国語Kをやってみたのだが、どうにも左手小指の疲労が激しい。特に、"す"の位置、qwertyで"z"にあたる位置の入力に次第に苦痛を感じるようになる。この現象について考えてみる。

おそらくこの位置は、入力速度自体は決して遅くはない。特に普通の上段に行くにつれて左にずれていくキーボードでは、ホームポジションからの小指の移動は非常に少ない。にも関わらず、小指を若干不自然な方向に曲げることを要求される疲労のある位置だ。

ただ、普通に日本語を打つとき、"す"の入力自体は緩慢な動作で行える。この位置の打鍵はqwertyでの"q","w","a"辺りとしか指運がバッティングせず、全うに設計された配列ではこの辺りとの連続打鍵はあまり起きないからだ。特に「です」「ます」を打つという動作なんかは多様されるため指に定着しやすく、また思考のステップとしてもひとかたまりで考える動作であるため、"で"や"ま"を打つときから小指を動かし始めているはずだ。しかし、高速で単語をタイプをするとき、緩慢な入力は許されない。これが疲労の原因であろう。実用的な速度を超えた高速なタイプを長時間続けるよう設計された配列なんてものには実用価値を見いだせないので、これで問題はない、という気もする。

だが、問題はそれだけではない。Ctrl,Shiftなどといったキーの存在だ。これらのキーは使っているキーボードやIMEやエディタの設定にもよるが変換動作などで多用され、小指の負担を増大させる。親指位置にシフトキーを配し、IMEの設定などを調整すれば負担は減少するだろう。毎日Emacsで鍛えた不屈の小指を持つ人もいるだろう。だが、だからといって考慮しなくても良いとは断言出来ない。そう考えると、qwertyで"z"の位置の相対的評価は下がることになる。

そうと言って簡単に他の配置に変えられるわけでもないので今のところ変更は保留する、のだが、そこで月配列系は親指シフト系に入力の性能ではかなわないのではないかと痛感する。何せ他の運指からおおむね独立した位置に二キーも入るのだ。あっちを取ればこっちが立たず、な配列設計において、この差は絶大だ。ロールオーバーの問題だって、親指シフトを同時打鍵でなく月のような前置シフトで調整すれば解決する気がする。

月配列の親指シフトに比べたメリットは、キーボードを選ばないことだ。少なくとも、私はそう考えので、親指に独立したキーが必要な改造はしたくない。そのほかにも、左右非対称デザインなキーボードに最適化してしまうかといった問題や、配列以外の入力環境をどこまで考慮するかといった問題が有る。ただ、これらの配慮と入力の性能自体の関係はトレードオフだ。入力速度、疲れにくさ、覚えやすさも、トレードオフとなってくる。そしてそのことに考えを至らせながら、自らの目指したいバランスを見据えて良く考えて設計されたのが小梅配列なんだろうなあ、と再認識。今のところバランスについての完全な結論は出ていないが、省スペースで、同時打鍵判定を使わず実装可能で、大概のハードで気楽に打てて、高速打鍵も普通には出来るイマドキの配列を作りたいなあ、と思う次第。